ドイツ人のジャーナリストによる資本主義への考察。ユニークな視点から書かれており、実に興味深い。
「近代的な資本主義は、どう見ても歴史上の偶然の現象だが、経済理論ではしばしば自然法則のように扱われ、無数の数学の公式で記述されるが、これはフィクションに過ぎない。」
「マルクスとエンゲルスが資本主義を拒否していたというのは誤解だと言っていい。二人は解き放たれた成長を歓喜して迎えている。」
「工業化がイングランドで始まったのはその地の実質賃金がほかのヨーロッパ地域よりも2倍も高かったからだ。」
「資本主義は今でも誤解されている。誤りその1、資本主義は市場経済と同一であると信じて疑わないこと。その2、国家は多大な恩恵をもたらす自由な市場の働きを妨げる撹乱者としかみなされていないこと。その3、グローバリゼーションは全く新しい21世紀の発明とみなされていること」
「巨大企業は百年以上も前に市場の固定化に成功している。DAX採用銘柄のうちほぼすべての企業が第一次世界大戦前から存在している。」
「経済の成長は技術の進歩が生産性を上げた時にしか実現されない。この絶えざる効率革命が賃金と利益のバランスをめちゃくちゃにしひいてはその後の危機につながる。技術の発展は資本主義の原動力だが同時にそこに内在する最大の脅威である。」
「ドイツ人の多くは、毎年の輸出超過を誇らしく思っている。それを強さの印と見ている。しかしドイツ製品の競争力はその質からきているだけではない。ドイツは賃金ダンピングを推し進め、労働コストを狙い通り下げた。2000年から2010年にかけてドイツの実質賃金は平均して4.2%下落した。」
「ユーロ危機について…最悪の誤りは危機の兆候が現れると一斉に節約を始めることだ。このごろではヨーロッパのどの国も節約するようになった。…この緊縮策は問題の解決にならないどころか、赤字を増やしているだけだ。災いをもたらすだけの緊縮策は、国民経済学と経営経済学の混同から出た考えだ。…ドイツ人は発券銀行が国債を買い支えたり国の債務を猶予するとそれは原罪であるとみなす。ドイツ人はいい加減歴史の経験を無視して勝手に新しい通貨システムを発明しようとする態度は捨てるべきだ。」
最後に、環境問題を取り上げ、
「資本主義の終わりは歴史の終わりでも、ましてや地球の終わりでもない。…今はまだ認識されていない新しいシステムがいつかは作られるだろう。
人間世界はオープンエンド。変更はいくらでも効くのである。」
として、資本主義の次までも見通している。
ドイツの問題も多く取り上げられて興味深い上に、資本主義の多くの課題もよく見据えている。
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