2014年6月に成立したとされるイスラム国。
世界各地で、暴力的行為を繰り返し、最近ではパリの同時テロが記憶に新しい。
本書は彼らの成立の歴史的背景を探っているが、その分析は奥が深く広範である。また、客観的な立場から書かれているため、マスコミ報道などから断片的に入る情報とは比較にならない詳細な知識を得ることができる。
あの悪名高きサイクスピコ協定とイラク、シリアの成立。
タリバンやイスラム国の思想的背景にあるワッハーブ主義とサウジアラビアとの密接な関係など深い分析がなされる。
よく言われるように、イスラム国はアメリカがアラブ人、ムスリムを標的として引き起こした敵対的で破滅的な戦争の結果誕生したもので、サダムフセインが作った基盤を引き継いで作られたのがイスラム国である。
その指導者、バクダディーの人となりも詳しい。
イスラム国の残忍さの分析の中では、十字軍の野蛮な行為や、スターリン、オスマン帝国などの歴史的な行為をあげ、「恐るべき暴力は敵を挑発し消耗させる」計算された戦略であるとする。
また、SNSなどのメディアを駆使した戦いもTORなどを駆使して、西欧からの遮断にも屈せず「イスラム国は今のところこの戦いに勝利し敵を恐れさせながら自らの目標を達成し続けている。」
いずれにせよ、「イスラム国は西欧の自らの軍事的、政治的、外交的な目的の一時的な達成のために様々な集団に対して行った無節操な武装的支援政策の結果生まれた。」
いわば、イスラム国は西欧が生み出したと同義である。
残念ながら、本書の言わんとするところは、
「この国家は軍事作戦で壊滅させることは難しい。」
そして、
「中東地域は終わりのない暴力的な権力闘争、果てしのない宗派抗争の泥沼に沈みつつある。」
ということである。
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