「経済は世界史で学べ」に続く、予備校講師による地政学の本。
その切り口は斬新で、世界史に関する深い知識にも裏打ちされていて、読みやすく、かつ新たな視点で世界を見つめ直すことができる。
まずは、19世紀アメリカから見たシーパワー理論。すでに、ペリー来航前にアメリカは上海とカリフォルニアを結ぶルートを作っていたという。さらに当時のマハンによって、日本の潜在的な発展力が見出され米英日独の海洋国家同盟の構築が具申されていたというから興味深い。
続いてアメリカの韓国離れの動きと中国への接近の背景についても述べている。東南アジアにおいては、フィリピンからの米軍の撤退と歩調を合わせるかのように中国が南沙諸島へ進出を加速したという。
さらにはインドの独立の背景と中国との関係、アメリカや中国とは異なる立場から日本への親密感を持っているインドという立ち位置がよくわかる。
また、核保有により均衡が保たれているという国際情勢。
近隣諸国が弱った時に侵略するというロシアの戦略。
そして、ヨーロッパによる人為的な分割から、不幸な歴史を歩んでいる中東とアフリカ。
などなど
やや、多くを詰め込みすぎた感もあるが、地政学を切り口に世界を見つめてみると、新たな世界観が見えてくる。
最後に、著者による日本の進むべき方向性も興味深い。
「アメリカ頼むに足らず、中国近寄るべからず、とすれば第三の道は明らかです。
日本が自主防衛を実現し、東アジアにおける自由主義諸国のリーダーになることです。」
地政学的に世界を俯瞰してみるとこのような結論になるのはよく分かる。
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