ヨーロッパにおけるオーガニック農業の実態を調査し、その問題点をあぶり出し、持続可能な有機農業とは何かを考えさせてくれる著作。
まずは、大規模に有機養鶏を行っているの農家の実態。使用している鶏は一般の養鶏と変わらず特定の性質を持たせたハイブリッド種で、ケージでの密飼いも変わらず、異なるのは飼料のみだがそれも栄養が不足するため、従来飼料を混合している。
有機野菜でも、規格に合わない形のものはスーパーからは不合格品とされ、店頭には並ばない。
有機野菜に使用されている種子も、ほとんどがハイブリッド種子。すなわち、特定の性質を持つ大量生産向きの大企業が開発した種子を使用しているため、土地それぞれに適合してきた在来種はほとんどない。 つまり、効率的に大量生産して、大量の化石燃料を使用し、スーパーで販売していることになんら変わりはないというのである。
そこで、著者が勧めるのは、地域に根ざした分散型の小規模農業である。そして、これら小規模農業を消費者と結びつけるのが、地域に根ざした食料品店である。
著者はわれわれに問いかける。
「私たち消費者の役割はなんだろうか。どうすれば、スーパーに対抗し、その壁を打ち破ることができるのだろうか。」
と批判的消費者になろうと呼びかける。
最終章では、具体的な行動策も示される。
必要なものを買う。
地域と季節を考慮する。
廃棄せずにボイコットを。
ニッチ市場を利用して支援する。
自分で作る。
代替システムを構築する。
情報を集め、広める。などなど
オーガニックが最も進んでいると思われるヨーロッパでさえも、このような実態であることに驚かされるとともに、日本で進む農業の効率化と大規模化に真っ向から反対の議論を展開していることに興味をそそられる。
もしかしたら、日本の小規模農業は、これからの農業のあり方にとってむしろ必要なのではないかとも思われる。
最終章で著者は主張する。
「これからも世界中のすべての人に持続的に食糧を供給できるのは小規模農業だけだ。」
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