川崎市の土橋という地区の農家に生まれた著者が、土蔵に貼られたオオカミの護符の由来を探ることから始まる物語である。
自ら歩いて取材し、武蔵御嶽神社に始まりかつて武蔵の国にあったオオカミ信仰を訪ねて、秩父にまで足を伸ばしながらこの国に息づいていた地域社会を描き出している。
経済優先の社会とともに忘れ去られていったつい最近まであった地域のつながりと、その源流まで辿ることでこの国の成り立ちが見えてくる好著である。
私も川崎にも秩父にもかつて関わりがあり、特に秩父各地の神社に祀られていたオオカミの姿や秩父独特の締めは不思議に思っていた。
その由来にも触れられて、親しみを感じた。
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