大恐慌からアメリカ経済を復活させ、第二次世界大戦を終結に導いたあのルーズベルト大統領が、実は重篤な病(メラノーマの脳への転移)に侵されていた、という謎解きの物語である。といっても、丹念な資料調査と医学的見地に裏打ちされたもので説得力は高い。
とくに注目されるのは、ルーズベルトの死の2ヶ月前に開催されたその後の世界情勢を決定づける重要な会議、ヤルタ会談での彼の状態である。
この会議におけるスターリンの主張で東ヨーロッパを共産主義の国家へと組み入れてしまったのだが、その時のルーズベルトは何とすでに癌の末期(それも脳腫瘍)にあり、正常な判断ができる状態ではなかったと推論している。
なお、訳者である渡辺氏によれば、そもそもヨーロッパと極東における局地戦争を世界大戦に拡大させたのはルーズベルトであるとし、戦後の冷戦体制のきっかけを作ったのもルーズベルトということにもなるという。
歴史にIFはつきものだが、本書に書かれたことが事実だとすれば、色々と想像を巡らせてしまう。
いずれにせよ、情報の透明性が進んだ現代では不可能ではある。
事実は、フィクションよりも面白い。
本書は、ルーズベルトという大統領の人物と歴史に迫る秀作である。
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